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2017年01月13日

トランプ新政権の前途を覆う「ロシア疑惑」

[12日 ロイター] - それほど深刻でなければ喜劇だし、それほど悲喜劇的でないとすれば、恐らく深刻なのだ。アメリカの政界が今週経験した状況を、作家や脚本家が提案していたら、現実味がないと確実に却下されていただろう。

トランプ政権はまだ始まってすらいない。それでも、今週が「狂気の沙汰」のピークだったのかもしれない。対抗するグループや権力中枢(報道機関、情報当局、政党、海外の超大国)が、政権が本格稼働する前に、出せる限りの情報を暴露したからだ。ただ、これはまだ序章にすぎないというのも、また十分ありそうな話だ。

オバマ大統領がシカゴにおいてよく練り上げられた最終演説を行う一方で、後継者となるトランプ次期大統領は、大文字ばかりの激烈なメッセージをツイッターに投稿していた。モスクワにおけるトランプ氏の性的乱行の猥褻な詳細を提示したロシアの情報機関に、トランプ氏が弱みを握られたのではないかという疑惑に対応せざるを得なかったからだ。

インターネット上でも11日の記者会見でも、トランプ氏はその疑惑を「フェイクニュース」と一蹴した。「フェイクニュース」とは、ネットとソーシャルメディアを舞台に増加しつつある虚偽のオンラインニュースを表現する用語だ。

しかし実際の状況はより複雑のようだ。複数の報道によれば、米ニュースサイトのバズフィードが10日遅く公開した、ワシントンの政治調査会社に雇われた元英国情報機関関係者が出所とされる文書は、ホワイトハウスも含め、ワシントンの最高レベルで議論されるほど、真剣に受け止められている。

トランプ氏は、情報機関当局者が先週提出した機密報告のなかで、この疑惑に関する2ページの要約を受け取ったと言われているが、その会議の場で何を言われたかは話題にしないと述べている。

疑惑が真実であるかどうかは誰も分からない。それが、他の報道機関の多くが疑惑を報道しなかった理由だ。それに問題の文書はいかなる意味においても、世界で最も重要な出来事ではない。たとえ今週に限定したとしてもだ。

トランプ大統領とダークサイドの逆襲

11日には中国の航空母艦が台湾海峡に針路を取った。インド洋では、今週初めに起きた事件の影響で、米国とイランの部隊がにらみ合っている。欧州の大国は依然として、複雑に絡み合った危機を切り抜ける道を探すのに必死だ。それは難民危機に始まり、ブレグジット(英国の欧州離脱)、ユーロの将来、極右勢力の台頭、そして欧州諸国自身のロシアとの対立と広範囲に及ぶ。

それでもまだ足りないと言わんばかりに、2017年の最も深刻な火種になるかもしれない北朝鮮が、これまでで最も先進的な弾道ミサイルの発射実験へと歩を進めている。

もちろん、外交がトランプ氏にとって最優先課題になったことは、ほとんどない。大統領選挙に勝利して以来初の記者会見において、彼は明らかに、経済と雇用政策、そして彼の経営するトランプ・オーガ二ゼーションの今後について重点的に語ろうとしていた。だが、ほぼすべてのメディアの質問は対ロ関係に集中した。

トランプ氏にとってのリスクは、疑惑の真偽が話題にならなくなることである。その疑惑が広く知られているという事実自体が、彼の信頼性を損なっている。

バズフィードが、怪しげであると思われても無理のない文書を発表する根拠として挙げたのは、その文書がワシントンの権力中枢、さらにはその外部でも出回っているから、ということだった。もっともな理屈である。しかし、疑惑をさらに拡散したことによって、この話題が決して消滅しないことはほぼ確実になった。

これはいくつかの理由で重要である。まず、政権が続くあいだ、トランプ氏とロシアの関係をめぐる問題がずっと付きまとう可能性が高い。ちょうど、ビル・クリントン氏に関して、不倫やその他いくつかの疑惑が、彼の大統領在任中ずっと付きまとったのと同じである。

すでに複数の議会幹部は、選挙期間中のハッキング、そして恐らくはもっと広範な米国政治に対するロシアの干渉に関する公聴会の実現をめざしている。最も穏便に事を運んだとしても、トランプ氏は冷笑の的になり、たえまない噂話や風刺に悩まされることになるかもしれない。

確かに、過去においてはそれで済んだ。しかし、ネットとソーシャルメディアを夜中にざっとチェックするだけでも、問題の文書に含まれるもっと露骨な内容が、何年にもわたって世間の記憶に残るように思われる。英国のキャメロン前首相と豚に関する下品な示唆と同様に、それが真実であるか否かはほとんど問題にはならない。


もちろん、これが一貫してロシアのプーチン大統領の戦略だったという可能性はある。つまり、トランプ氏を持ち上げてホワイトハウスに送り込み、その後彼の評判を落とすということだ。だが、これほどの悪巧みをプーチン氏や彼の配下のスパイたちの功績とするのは、買いかぶりすぎかもしれない。

真実だった場合、最も大きなダメージを与える疑惑があるとすれば、トランプ陣営の上級幹部らが選挙期間中に直接ロシア当局者と接触していたことを示唆するものだろう。公開された文書のうち、トランプ氏の知人とロシア当局者との会合があったという複数の主張については虚偽である公算がすでに高い。

記者会見の最後でトランプ氏は、自身の陣営とロシア当局者のあいだに接触があったかという質問に対して、あからさまに回答を拒否した。

仮に、問題の文書全体が真実であったとしても、それ自体は必ずしも、トランプ氏が何らかの「弱みを握られた」ことを意味しない。実際のところ、これらの話が世に出てしまったという事実により、ロシア政府の誰であれ、米大統領を脅迫することは難しくなってしまったとも言えるだろう。「(女性の)性器に触れても」云々の発言が録音されていても選挙に勝てたのであれば、モスクワのリッツカールトンホテルで彼が何をやっていようと、そのせいで破滅する可能性は低いだろう。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)
http://jp.reuters.com/article/trump-russia-column-apps-idJPKBN14X0AF?pageNumber=1
posted by world at 23:46| 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする