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2010年01月27日

ギリシャ経済危機の行方





ギリシャの経済危機の処理は、ペロポネソス戦争の余波との不穏な類似を彷彿させる。この戦争が紀元前404年に終わった時、勝ち誇ったスパルタ人はアテネを「30人の僭主」の支配下に置き、彼らはアテネの人々から市民権や民主的権利をほぼ奪い去った。

それから1年後、反乱に見舞われて僭主政治が終わりを迎え、民主主義が復活した。数十年後には、ギリシャとスパルタの誇り高き都市国家は地政学の地図から消え去っていた。

もしユーロ圏が救済策と引き換えに外部からギリシャに緊縮財政を強いれば、これと似たようなことが起きるのではないか、と筆者は懸念している。実際、ギリシャ政府がいよいよ本格的な財政危機に陥れば、救済が必要になるかもしれない。

ユーロ加盟時点から続いてきた財政報告の粉飾

ギリシャ危機の発端は、かなり前にさかのぼる。同国は財政報告の粉飾の手を借りて、2001年にユーロに加盟した。粉飾された数字は、事実に反して、ギリシャがユーロ加盟に求められる様々な基準を満たしていることを示していた。

その後の歴代ギリシャ政権は右派、左派を問わず、国の財政状況をごまかして報告してきた。公表されている2009年の財政赤字(GDP=国内総生産=の12.7%に相当)は、到底持続できるものではない。あえて「公表されている」と言うのは、筆者自身、この高い数字でさえ信じていないからだ。

筆者の知る限り、ブリュッセルでもこれを信じている人は誰もいない。こうした信頼の欠如はそれ自体、危機の解決の障害になる。

可能性の高いシナリオは4通りある。第1の選択肢は、厳しい緊縮財政計画を条件にユーロ圏あるいは欧州連合(EU)が救済の手を差し伸べつつ、ギリシャがデフォルト(債務不履行)するという筋書きだ。この場合、EUは問題を解決するために、現代版の「30人の僭主」をアテネに送り込まなければならない。


誰もが避けたい「救済を伴うデフォルト」
これはギリシャとEU双方が何としても避けたいシナリオだ。ギリシャが支払い困難に陥る確率は予測不能だが、その確率は、投資家がギリシャ国債の保有に対して求める利回りとともに高まる。そして先週、2年物のギリシャ国債の利回りはギリシャがユーロ圏に加盟して以来、最高の水準をつけた。

では、もしギリシャがデフォルトしたら何が起きるのか。ブリュッセルの財務・金融担当者たちが、ギリシャ財務省を掌握し、同国に緊縮財政を強いることになる。地元の人々は間違いなくこれを外国勢による計算されたクーデターと見なし、民主的な意思への挑戦だと考えるだろう。

ギリシャのヨルゴス・パパンドレウ首相は先週後半、ギリシャが主権を失う危険があると警告した。ギリシャ国内では既に、外国人に対する態度が冷たくなっており、特に危機について報道したり、評論したりする外国人に対してはその傾向が著しい。

ギリシャの政治家は、先に待ち受けている事態について国民を覚悟させるのに大失敗したにもかかわらず、一般市民は彼らの後ろで結集している。

となれば、シナリオ1の展望は、30人の僭主の悲しき支配と似たような道をたどるだろう。つまり、ひどく不快で、残忍かつ短い君臨となるのである。

救済なしのデフォルトなら、危機はポルトガルやスペインにも波及

シナリオ2は、救済なしのデフォルトだ。EUは、ギリシャがEUのルールを遵守しなかったことを理由に財政支援を拒む。この場合、危機はかなり高い確率で、ギリシャと似た窮状にあるポルトガルにも波及するだろう。最終的には金融市場が、スペインが持続可能な成長軌道に戻れるのかどうか疑い始める可能性もある。

ブリュッセルの面々が祈っているのがシナリオ3で、EUの穏便な説得によって、ギリシャ政府が必要なことをすべて、それも単独で行うよう仕向ける筋書きだ。

ここには、社会支出および医療支出の大幅削減、極めて不人気な増税、公的部門の雇用レベルの削減、公的部門の賃金凍結、そして民間部門の実質賃金の引き下げを可能にする労働改革などが含まれる。


これは実に身の毛のよだつようなリストだが、ギリシャがユーロ圏入りしてからの10年間で失った競争力を取り戻すためには、恐らくこれだけのことが必要になる。通貨同盟に入ってしまった場合、調整する手段はこれしかない。もはや、切り下げるべき自前の通貨がないからだ。

そして最後に第4の選択肢は、ごまかしだ。何も解決せずして、大部分の人をごまかせるような対策を取るのである。

ギリシャは何年もかけて、この分野ではある程度の専門技術を身につけてきた。このケースでは、ギリシャ政府は世間が認めるような数字を盛り込んだ再建計画をまとめるか、構造改革に関するミスリーディングな約束をすることになる。

これで必然的な結末は、ひとまず先送りできる。将来いずれどこかの段階で我々は今と同じ局面を迎え、ギリシャ財政の数字は、暗澹たる現実を全く反映していないと言って心底ショックを受けたふりをすることになるかもしれない。だが、これは次世代の政治家が心配すべきことであり、我々自身は窮状を免れられる。

4つのシナリオのうち最後の展開は、ほかのシナリオに伴う大きなリスクを避けられるため、政治的には最も魅力的だろう。だが、長期的に見れば最もリスクの大きいシナリオだ。というのも、ギリシャは二度と後戻りのできない地点、つまり何をしようとも回復を遂げられない段階に近づくことになるからだ。

シナリオ4は、ユーロ圏のような緩やかに統治された通貨同盟を限界点に近づける筋書きなのである。

ギリシャだけでなくユーロ圏の信認も問われる

危険にさらされるのはギリシャの信認だけではない。ユーロ圏そのものの信認も問われることになる。ユーロ圏は――政治同盟とまではいかなくても――首尾一貫したやり方で今回のような危機をマネージする方法を見つけなければならない。

欧州は今から危機管理の手順を準備し始めるべきである。それが実現するまで、そしてそれが実現しない限りは、知識人がある程度正当な理由をもって、ユーロ圏は不完全かつ――より重要なことに――限界のあるプロジェクトだと主張しても、我々は驚いてはならないのだ。






posted by world at 16:48| 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする